ホメオパシーではどんなことに注目してレメディを選ぶのか、インドのJayesh先生が症例を使ってわかりやすく説明してくださっているので紹介します。
ロタウイルス胃腸炎の症例
2歳半〜3歳くらいの男の子。
4日間ずっと嘔吐・下痢があっておさまらないということで、夜11時に先生のところに連れてこられてきました。
- 飲んだり食べたりができず、食べられたとしてもすぐに吐いてしまう状態
- 大量の水っぽい下痢
- 発熱
- 機嫌が悪くて元気もなく、ベッドからも起き上がるのも難しい
- 脱水症状の一歩手前の状態
病院ではすぐに入院が必要と言われたそうです。
ちなみに翌朝になってからロタウイルスの検査に出したところ、陽性だったとのこと。
お父さんやお母さんが説明している間、先生が男の子を観察していると、横になりながらずっと唇を細かく動かしています。
「何してるんですか?」と先生がお母さんに聞くと、「2日くらい前からずっとこうやってハミングしてるんですよ」とのこと。
童謡か何かをずっとハミングしているようです。
ご両親とのお話で、男の子がずっと抱っこしてゆらゆらされたがっていること、アイスクリームを欲しがっていること、寝ている間は嘔吐や下痢がおさまっていることがわかりました。
これらの情報をもとに重要な症状をピックアップしていくのですが、先生がレメディを選ぶのに使った症状は下の4つです。
- ハミングしている
- 下痢は睡眠時によくなる
- アイスクリームを欲しがる
- 抱っこしてゆらゆらされるとよくなる
その結果、Phosphorus(フォスフォラス)というレメディが4つすべての症状をカバーしていることがわかり、男の子の全体的な状態と矛盾しているところもなかったので、男の子はPhosphorusを1粒その場でとり、おうちに着くころにはもう大丈夫だったそうです。
嘔吐も下痢もなくなり、すっかりよくなったとのこと。

水様の下痢や発熱、ベッドから起き上がるのが難しいとかではなく、「ゆらゆらされたい」や「ハミングしている」をピックアップされたのは、これらの症状がこの子ならではのユニークな症状だからです。
嘔吐・下痢の症状がある子で、水っぽい下痢の子や熱がある子はごまんといるでしょう。
でもずっとハミングしている子や、ゆらゆらされたがる子はそんなに多くないはず。
「嘔吐・下痢から来ている症状ではなく、この子から来ているものを探しているんです」って先生は説明されていますが、同じ嘔吐・下痢でも、症状はひとりひとり違います。
嘔吐・下痢によくある症状は置いといて、今この時点におけるこの子の状態に目を向け、この子が経験していることに一番よく似ているレメディを選んだからこそ、1粒で大きな変化につながったんだと思います。
A modern medicine doctor is interested in knowing what is coming from the diarrhea, from the infection, from the bacteria. We are trying to understand what is coming from YOU. Because a homeopath is not treating diarrhea; he or she is treating YOU.
西洋医学の医師は、下痢や感染症、細菌に由来するものに興味があります。
私たちは「あなた」に由来するものを理解しようとしています。というのも、ホメオパスが手当てしているのは下痢ではなく、「あなた」だからです。
同じロタウイルスでこの子と同じような嘔吐・下痢の症状であっても、それをどんなふうに経験するかはひとりひとり違うので、必要なレメディもそれぞれ違うものになります。